いわゆる「家なき子」を利用した相続税対策は封じ込め – 平成30年度税制改正 –
いわゆる「家なき子」を利用した相続税対策は封じ込め – 平成30年度税制改正 –
相続税の申告において、対象地について小規模宅地等の減額特例を受けることができれば、相続税を大幅に抑えることが可能です。平成27年からの基礎控除額の引き下げに伴う相続税増税に対する緩和措置として、小規模宅地等の減額特例に関しては、適用対象や限度面積が拡大されています。
自宅を相続した場合、小規模宅地の特例の適用を受けることができれば、自宅土地の評価額が8割減額されます。限度面積は平成27年より100坪(330㎡)まで。
路線価坪100万円×50坪=5000万円の土地なら、小規模宅地の特例適用により、5000万円×8割=4000万円が減額されます。
特例適用前の相続財産が7000万円、基礎控除額が4800万円だと、特例適用により、相続財産は7000万円-小規模宅地減額4000万円=3000万円で基礎控除以下となり、相続税はゼロとなります。
自宅敷地に係る小規模宅地特例には、いくつかのパターンがあり、その中の1つに「家なき子」に係る特例があります。
「家なき子」特例
「家なき子」特例は、親が一人暮らしで、子供とその配偶者に持ち家がない場合に、適用があります。持ち家がない者に係る特例であることから「家なき子」特例と呼ばれます。
「家なき子」特例を利用した節税対策は封じこめ
現行税制では、被相続人(親)が一人暮らしの場合に、「家なき子」の特例の適用を受けるために、相続人(子)が現在住んでいる持ち家(家屋)の名義を娘(孫)などに贈与してそのまま住み続ける、といった節税対策が可能でした。
しかし、こういった節税対策が、平成30年度税制改正にて封じ込められることとなりました。
この改正は、平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。
特定居住用宅地等の要件(現行税制)
※赤字部分が「家なき子」特例に係る適用要件
区分 | 特例の適用要件 | |
---|---|---|
取得者 | 取得者等ごとの要件 | |
被相続人の居住の用に供されていた宅地等 | 被相続人の配偶者 | 「取得者ごとの要件」はありません。 |
被相続人と同居していた親族 | 相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人 | |
被相続人と同居していない親族 |
①から③の全てに該当する場合で、かつ、次の④及び⑤の要件を満たす人
|
|
被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等 | 被相続人の配偶者 | 「取得者ごとの要件」はありません。 |
被相続人と生計を一にしていた親族 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人 |
【平成 30 年度税制改正大綱(抜粋)】
〔廃止・縮減等〕
〈相続税〉
(1)小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、次の見直しを行う。
① 持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げる者を除外する。
- イ 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
- ロ 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
② 貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く。)を除外する。
③ 介護医療院に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等について、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして本特例を適用する。
(注)上記の改正は、平成30 年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。ただし、上記②の改正は、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等については、適用しない。その他所要の措置を講ずる。
(参考)自民党ホームページ : 平成30年度税制改正大綱